2020年12月14日に、東洋経済から「高給取りの「製薬営業」が大量にクビにされる訳 ピークから1万人減、コロナ禍で過剰体質も露呈」というタイトルの記事が発表されました。

その中で、
今回、武田がMRを中心とした人員リストラに踏み切ったことに、コロナ禍が影響しているのは間違いないと社内では噂されている。「MRが活動していないのに売り上げが変わらないことに業を煮やしたクリストフ・ウェバー社長自身がリストラを断行したようだ」(同社関係者)という声もある。
といった内容が記載されていました。
果たして、それは本当でしょうか?
武田製薬がリストラを行った原因について、有価証券報告書から私なりの見解を述べたいと思います。
新型コロナウイルスによる業績の影響は、軽微
有価証券報告書によると、新型コロナウイルスによる業績の影響については、
COVID-19の世界的な流行拡大に伴い、当年度業績への影響は軽微でありました。影響を受けた各国の医薬品市場の停滞により、売上収益は幾らかのマイナス影響を受けましたが、同時に、渡航制限や集会の自粛等、特定の事業活動を自主的に制限したことにより経費使用が減少したため、利益に対する影響は限定的でした。
武田製薬「有価証券報告書第143期」より引用
と述べています。
ここで新型コロナウイルスによる業績の影響は軽微であり、利益に対する影響は限定的であると述べています。
武田製薬の業績からリストラの原因を分析してみる
ここから、武田製薬がリストラを行った原因について会社の業績から分析していきたいと思います。
こちらが、武田製薬の連結業績になります。
武田製薬「有価証券報告書第143期」より引用
赤枠で囲った部分の「売上収益」「売上原価」「製品に係る無形資産償却費及び減損損失」「当期利益」が気になったポイントになります。
それでは気になったポイントについて、1つ1つ見ていきたいと思います。
売上収益
[売上収益]
売上収益は、前年度から1兆1,940億円増収(+56.9%)の3兆2,912億円となりました。Shire社買収により獲得した製品の売上が年間を通じて計上された(1兆5,222億円)ことが主な要因であり、これによる増収額は1兆2,130億円となりました。
武田製薬「有価証券報告書第143期」より引用
売上収益については、Shire社の買収によって前年度より1兆1,940億円の増収になっています。
※ 売上収益は、「売上高」に該当するものです。
売上原価
[売上原価]
売上原価は、対前年度4,380億円(+67.2%)の1兆898億円となりました。この増加は、主にShire社買収により取得した製品にかかる年間の売上原価およびShire社買収に伴い計上された棚卸資産の公正価値調整等にかかる非資金性の費用の増加1,257億円によるものです。
武田製薬「有価証券報告書第143期」より引用
売上原価については、主にShire社の買収によって前年度より4,380億円増加しています。
※ 売上原価は、「費用」に該当するものです。
製品に係る無形資産償却費及び減損損失
[製品に係る無形資産償却費及び減損損失]
製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、対前年度2,768億円増加(+155.0%)の4,554億円となりました。これは主にShire社買収に伴い取得した無形資産の償却費が2,506億円増加したことによります。
武田製薬「有価証券報告書第143期」より引用
製品に係る無形資産償却費及び減損損失については、主にShire社の買収によって前年度より2,768億円増加しています。
※ 製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、「費用」に該当するものです。
そして当期純益は前年度の1,351億円から、当年度は443億円にまで悪化しています。
※ 当期純益は、「最終的な利益」に該当するものです。
武田製薬がリストラを行った本当の理由は!?
武田製薬の連結業績から分析をすると、Shire社の買収によって売上収益は増収を達成しています。しかし、費用がそれ以上にかかってしまったことで業績が悪化したという印象を受けました。
このことから、新型コロナウイルスの影響というよりもShire社買収によって業績が悪化してしまい、そのしわ寄せがリストラという形で表れたのではないかと考えられます。
武田製薬には新型コロナウイルスと関係なく、もともとリストラの計画があったのではないのでしょうか。
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